易経の大象と小象:象伝の読み方
2026年10月24日 更新
象伝(象傳)には、性格のまったく異なる二つの部分があります。大象(大象)は一卦につき一文で、上下二つの八卦から描いた情景と、それにふさわしい振る舞い——「君子もって……」——を述べます。小象(小象)は一爻につき短い注釈を一つ置き、たいていは爻の位置から爻辞を説明します。卦を立てて変爻がないとき、大象は易経が与えてくれるもっとも直接に役立つ助言です。
象伝の位置づけ
象伝は経の上下二篇に合わせて上下に分かれ、十翼のうち二つに数えられます。「大」と「小」に分けて数えるわけではありません。大象・小象という呼び名は、その二つの層を指すために後から使われるようになった便宜的なものです。王弼の伝統で編まれた通行本では、大象は各卦の卦辞と彖伝の後に置かれ、小象はそれぞれの爻の後に「象曰」(象に曰く)で始まって置かれています。
レッグは大象の定型句を "the superior man, in accordance with this, …"、ヴィルヘルムは "Thus the superior man …" と訳しました。どちらも同じ二文字「君子以」(君子もって)の訳です。
大象のつくり
ほとんどすべての大象は、同じ三段の型に従っています。
- 二つの八卦の関係を描く情景。 「山の下に泉が出る」「天と水が違い行く」など。
- 卦の名。
- これを手本とする人物と、その人が何をするか。
いくつか並べてみると、その調子が聞こえてきます。
- 第1卦 乾為天:天行健,君子以自強不息——天の運行は健やかである。君子はこれにならって、自らを強めてやまない。
- 第2卦 坤為地:地勢坤,君子以厚德載物——地の勢いは坤(受け入れる)である。君子はこれにならって、厚い徳で物を載せる。
- 第4卦 山水蒙:山下出泉,蒙;君子以果行育德——山の下に泉が湧き出る。君子は果断に行い、徳を育てる。
- 第6卦 天水訟:天與水違行,訟;君子以作事謀始——天と水が反対に進む、それが争いである。君子は事を起こすにあたって、はじめをよく謀る。
- 第52卦 艮為山:兼山,艮;君子以思不出其位——山が重なる、それが止まることである。君子は思いを自分の位から出さない。
主語はいつも君子とは限りません。七つの大象は「先王」(先王)を挙げ、比・豫・観・復などがそれにあたります。泰や姤のようにいくつかは「后」(君主)を挙げ、離は「大人」(大人)を、剝は「上」(上に立つ者)を挙げます。これらは、自分を治めることよりも国を治めることに関わる振る舞いを説く卦です。今日読むときは、自分の立場に合った役割として受け取ってください。あなたの状況の中で、他人に対して責任を負っている人のことです。この人物像については君子とは誰かで詳しく説明しています。
大象が卦辞を無視しているように見える理由
大象は独自の論理で動いています。二つの八卦を自然の情景としてだけ見て、そこから倫理的な教訓を引き出すので、卦辞とはまったく違う調子になることもあります。それがもっとも目立つのは、厳しい卦です。
- 第12卦 天地否(閉塞):大象は、君子は徳を控えめにして難を避ける、と言います。
- 第39卦 水山蹇(行き悩み):山上有水,蹇;君子以反身修德——山の上に水がある。君子は身に立ち返って徳を修める。
- 第47卦 沢水困(困窮):澤無水,困;君子以致命遂志——沢に水がない。君子は命をかけて志を遂げる。
卦辞は状況が何であるかを告げ、大象はその中で徳ある人が何をするかを告げます。この違いこそ、象が実践で役立つ理由です。判定だけを突きつけて終わることが決してないのです。
小象:一爻に一つの注釈
小象は短く、原文ではしばしば韻を踏んでおり、多くは爻をその位置によって説明します。乾では次のとおりです。
- 潛龍勿用,陽在下也——「潜龍用うるなかれ」:陽が下にあるからである。
- 見龍在田,德施普也——「見龍田に在り」:その徳が広く施されるからである。
- 亢龍有悔,盈不可久也——「亢龍悔いあり」:満ちたものは長く続かないからである。
坤の初爻では、履霜堅冰,陰始凝也;馴致其道,至堅冰也——「霜を履んで堅氷至る」:陰が凝り始めたのである。その道をたどっていけば、堅い氷に至る。
小象でもっともよく出てくる言い回しは位置に関するものです。位不當也(「位当たらざるなり」)、以中正也(「中正なるをもってなり」)、志行也(「志行わるるなり」)。これは正位と中爻と同じ語彙です。爻辞に戸惑ったとき、伝統がどの構造上の事実でそれを説明しているのかを、小象がしばしば教えてくれます。
変爻のない卦では大象が助言になる理由
朱熹が定めた慣例では、変爻のない卦は本卦の卦辞で読みます(変爻の読み方を参照)。朱熹のルールが挙げているのは卦辞であって、大象はそこに含まれていません。けれども、ヴィルヘルムをはじめ多くの読み手は象を卦辞の自然な相棒として扱っており、それには十分な理由があります。
- 変爻のない卦は状況の全体を描いています。転換点ではありません。卦全体を振る舞いの手本として語る文は、大象だけです。
- 小象は爻に属しています。 何も動いていなければ取り上げる爻がないので、小象は背景にとどまります。
- 象はいつも実践的です。 卦辞が「凶」や「咎なし」としか言わないときでも、「今、何をすればよいか」に答えてくれます。
定まった卦の読み方については、変爻がないときでさらに説明しています。
実際に使ってみる
卦を立てたら、次のようにしてみてください。
- 変爻がないとき: 卦辞を読み、大象に振る舞いを決めてもらいます。最後の一節を、自分の事柄について自分の言葉で書き直してみてください。
- 変爻が一つ以上あるとき: 変爻の爻辞を、それぞれ小象と並べて読みます。小象が「位当たらず」と言うなら、自分がどこで立場に合わない動き方をしているかを問いかけてください。
- どちらの場合も: 大象の情景をゆっくり読みます。「山の上の水」や「山の下の泉」は、何日も心に留めておける場面です。どんな言い換えよりも役立つことがよくあります。